1.中退共が注目されるのは
適格退職年金(以下「適年」という)の移行先として中小企業退職金共済(以下「中退共」という)が注目されています。そのポイントは以下の3つです。
【1】国が出資する独立行政法人で、勤労者退職金共済機構が
運営しています(破綻リスクが小さい)。
【2】確定給付型企業年金のように、資産運用が悪化しても
掛金の増額が発生しません。
【3】退職給付債務が発生しないので、会計上、引当金の計上が不要です。
以上のことから、適年の移行先として中退共が脚光を浴びているのです。
2.中退共の特色は?
中退共は中小企業向けに設計された退職金共済制度です。よって、安全性や税制上の恩恵、管理の方法の手軽さ等に特色があります。主な特色は以下の6つです。
【1】掛金の一部を国が補助:新規加入1年以内の場合の特典です。
適格退職年金からの移行の場合には、適用されません。
【2】全額非課税:掛金は法人の場合は損金として、
個人企業の場合は必要経費として計上できます。
【3】簡単な管理:掛金は口座振替なので手間がかかりません。
従業員毎の納付状況、退職金額を事業主に知らせるので管理が簡単です。
【4】掛金月額の変更:従業員毎に選択した掛金月額はいつでも増額できます。
また、加入後、従業員の同意があれば掛金の減額変更も可能です。
【5】通算制度:過去の勤務期間の通算や転職した場合の通算ができます。
【6】退職金支給:退職金は、機構・中退共から直接、退職する従業員の
口座に振り込まれます。退職金は一時金のほかに、一定の要件を
満たせば本人の希望により分割して受け取ることができます。
3.中退共の移行に対する注意点は?
中退共に加入済みの企業は適年からの移行はできません。よって、別の手立てを考えなくてはいけません。
また、移行時、移行後に積立不足の解消は求められません。積み立てていた金額がそのまま移行されるだけです。そして、移行後も積立不足について中退共から解消を求められることはありません。したがって、積立不足の解消は自主的に事業主側で考えなければなりません。また、不足額が多大で、解消不能となれば、制度の再構築が必須となってきます。
4.中退共への移行と最近の流れを知りたい
本年の4月になると、適年から中退共への移行金額の上限が撤廃される予定です。今まで120ヶ月分の掛金しか移行できませんでした。しかし、今後はもっと大きな金額を移行できるようになります。今までは、企業が適年解約に伴う一時金の課税問題が大きなボトルネックになっていました。しかし、この問題にピリオドが打たれることになり、適年からの移行が増加していくでしょう。
ただし、「適年の資金を中退共に移して問題解決!」とはいきません。運用の悪化や退職金規程の問題を解決しない限りは、「本当の問題解決」にはなりません!移行する際に制度全体の再構築を考えることは絶対条件といえます。
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