1.制度変更の目的の明確化!
最近、企業の要望として退職金制度を変更する話が多くなっております。適格退職年金の廃止に伴い、制度そのものを見直す企業も増えております。また、確定拠出年金の普及により、大幅に制度を変更する企業も増えてきました。制度の変更をする場合や新制度導入にあたってまず何をすればよいのでしょうか?
制度変更や新制度の導入を行う場合は、まず「なぜ制度を変更するのか」目的を明確にすることが重要です。
2.どんな制度変更が多いのか?
退職金制度の変更や新制度導入の目的は、企業の考え方や状況によって異なります。ただ、集約すれば以下のパターンにおさまるのがほとんどです。
- 勤続による累進制度を廃止して、功労報酬要素を加え、貢献度を重視した退職金制度に変更する(これにより社内を活性化する)。
- 退職金算定基礎を基本給リンク型から非リンク型に変更する(年齢構成の高齢化や定年延長に伴い増大する退職金負担を抑える)。
- 社内積立型から社外積立型に変更、または、退職一時金制度から企業年金制度に転換する。
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他にも上記のパターンをミックスさせる方法等があります。
3.制度変更を法規制に対応させるには?
労働基準法89条には、退職手当の定めをする場合に関する事項が記載されております。具体的には、以下の点を就業規則に定めなければなりません。
【1】適用される労働者の範囲
【2】退職手当の決定、計算および支払の方法
【3】 支払の時期
したがって、退職金制度を変更、新設したときは、就業規則(退職金規程)に必ず定めなければなりません。
また、賃金の支払の確保等に関する法律では、退職金の支払に必要な額のうちの一定額について保全措置を講ずるよう事業主に努力義務を課しています。特に社内積立型の退職一時金制度の場合には、その原資について保全措置を実施するように努める必要があります。
4.退職金水準の検討は?
企業として退職金の水準を設定するのは、どのように行うべきでしょうか?現行の制度の水準を調査・分析するとともに、あるべき水準についてよく検討する必要があります。それには、世間相場や生涯賃金を用いて比較検討して行います。
退職金前払い制度と退職金制度の選択できる制度を導入する場合は、どちらを選択しても生涯賃金に制度上の不公平がないよう配慮することがポイントとなってきます。様々なシミュレーションを行い、モデル退職金カーブを作成して、現状との対比分析を行い、制度変更の基本的な考え方を固めていきましょう。
また、制度移行により支給水準の低下する人達が発生する場合があります。一方的な変更は、労働条件の不利益変更として争いとなる場合がありますので、専門家等の意見を聞いて慎重に制度変更を行いましょう。
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